任命拒否で見えた菅政権の強さ弱さ

 国会論戦のなかで日本学術会議の任命拒否に対する菅首相の論拠はことごとく崩れ去った。そして新たな問題が菅首相から語られた。強権政治の姿とともに、それは民主主義とは相容れないものだけに国民の怒りを恐れる弱さが見えた。

 新たな問題の1つは、菅首相の学術会議会員人事介入が大問題なのに、決裁前に杉田和博官房副長官から6人を任命しない報告を受けたと認めたこと。2つは、「今回の任命に当たって推薦前の調整が働かず、結果として学術会議から推薦された者のなかに、任命に至らなかった者が生じた」と首相自身が述べたことである。

 「杉田和博さんという警察官僚出身の方・・・公安情報というものを知り尽くして、ありとあらゆる人物の裏側をむき出しにできる」(御厨貴・芹川洋一編著『平成の政治』、日本経済新聞社出版)という。杉田氏は、2017年8月から官房副長官として内閣人事局長に就任。この杉田氏から報告を受けて任命を拒否したと首相は認めた。学術会議法を勝手に解釈改ざんし、恣意的人事介入をしたのである。

 さらに菅首相は、日本学術会議と事前の調整がなかったとし、「今回のように推薦名簿をいただいた後、99名の任命を行う場合とでは、変わらない」とした。自らの任命拒否を正当化するために言ったのである。が、しかしなんということか、日本学術会議の独立性を脅かしているのに、けろりとしている。学術会議の前会長は、事前協議を否定しているから、これは大問題である。

 もう反駁の余地がなくなっても古代ギリシアの懐疑論者は、あらゆる言明には異論が存在するなどと考え論じ返した。それに真似てか、菅首相も、学術会議法違反、学問の自由違反、学術会議があの戦争を教訓にする歴史の無視、多様性がないなどの批判も、ことごとく論拠が崩れて、新たな「正当性」を考えだしたのである。

 安倍政権のもと2000年に261人であった内閣官房が千人を超える力を持ってきた。この内閣官房に内閣人事局があり、内閣情報調査室があって官僚や大臣などの情報も集めているという。さらに内閣府が設置され、組織人員は2300人を超える。注目は、各省庁の調整が仕事であった内閣官房が法案をつくれるよになり、内閣府も総理を長として横断的に重要政策を立案できるようにした。そしてこの内閣府は、他の省庁の上にある。

 政権のトップダウン政策と人事を背景に、官邸主導ですすめてきたその強権政治が、「任命拒否」問題を通じて浮かび上がった。つまり、強権的国家づくりをすすめてきた安倍内閣の延長にある菅内閣は、その強権を振りかざしたゆえに、逆に、民意を恐れて勝手な法解釈や法違反をする弱点を国民の前に露呈したのである。

 強権政治と民主主義は両立しない。民主主義が豊かになる日本をつくるためにも、違法を重ね、国民への言論統制や法治国家のないがしろにもつながる「任命拒否」は撤回させるしかない。
《日本学術会議「任命拒否問題」⑤》

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